音の鳴るブログ

鳴らないこともある

ウェブオーディオが使われているインスタレーションの様子を見てきた

今、奈良で 町家の芸術祭 はならぁと というイベントが開催されていて、そこで展示されているインスタレーション作品にウェブオーディオが使われているので様子を見に行った。SjQの魚住勇太さんの作品で詳しくはここに書いてある。

http://yutauozumi.com/cell/details/

時計仕掛けの生命をイメージして設置された装置。装置は部屋の気温や光といった環境と反応しながら、音を紡ぎ、空間を満たして行く。その動きや音は、刻々と変化していく。装置の内部にはいくつかのアームが設置されている。それらのひとつひとつが、単なる部品ではなく、個体として、互いに反応する動きを見せる。その様子は、分ごと、時間ごと、日ごとに、変化する。それは常時、音に変換されることで、一つの流れをもったサウンドスケープとしてリアルタイムで奏でられる。

会場は複数の人工生命デバイスがカチャカチャと反応しながら音楽を作り出す空間になっていて、人工生命デバイス自身の状態や空間の環境を元に音楽パラメーターを生成して、それをサーバー経由のブラウザでリアルタイムに処理してサウンド化しているということなので相当にコンピューティングなことをしているのだけど、現地ではそう見えなくて機械と生物が曖昧に溶け合うというような感じで心地よかった。音自体は以下のサイトで現地で鳴っているものがリアルタイムに聴けて充分楽しめるのだけど、やっぱり音は場であるし、実際に人工生命デバイスが音楽を生成している現場というのは緊張感があって断然良いので、みなさん現地まで見に行けば良いと思います。

奈良は遠いという方はこのサイトを上手く使うと簡単に来られます。

語り

ウェブオーディオ部分を担当したエンジニアの人によると、作家さんからMax/MSP等で綿密に作り込まれた音のイメージを伝えられて、そのイメージを壊すことなくWeb Audio APIで再現させることが求められたけど、Web Audio APIだけではやりたいことがなかなかできなくて結構ガツガツ書いたということで、うわー、そうとう辛そうだなと思ったし、実際辛かったし、体重が3kgくらい増えたけど、疲れた時のハッピーターン250%は格別です。

という感じで、フロントの部分は僕が書かせてもらった。事前にたまたま neume.js というウェブオーディオライブラリを作っていたので、それを使っている。

ただ、ライブラリは早い段階での試作には強力でも、要求に合わせてキチキチにチューニングしようとすると拡張用コードを結構書く必要があったり、チューニング作業はWeb Audio APIの仕様とWebKitの実装とライブラリの実装とアプリケーションの性質とやりたいことのバランスを考える必要があったりと、まだまだノウハウが足りないのを実感した。夢の中でウェブオーディオ仙人みたいな人に弟子入りして色々教えてもらいながらどうにか完成させたという感じ。このあたりは色々あるのでそのうち書けたら書きたい。

ウェブオーディオとアート/音楽

現地で生成される音をネットを介して体験することができるのはかなり面白くて、応用方法を色々考えるとアートや音楽と体験者との距離感の新しい選択肢になりえそう。 音楽系のメディアアートだとMax/MSPとかSuperColliderとかが良く使わていて、そういう蓄積のある技術に比べると Web Audio API はまだまだ見劣りする感じだけど、ブラウザがあれば*1専用のアプリケーションやデバイスを用意することなく誰でも手軽に体験を共有できるという点で重要なポジションを担えるんじゃないかなと思います。

ところでカレーの情報です

会場の近くのカフェ、居心地もカレーも最高だったので合わせて寄りたいところです。

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ミジンコブンコ

*1:IEに対応していないとかあるけども